梅一輪 一輪ほどの あたたかさ
毎年、雪に咲く梅の花を見つけると、江戸時代の俳人・服部嵐雪(はっとり・らんせつ)が詠んだ、この有名な句を思い出します。
春告げ花(はるつげばな)とも呼ばれる梅は、馥郁(ふくいく)とした香りと気品ある花姿(はなすがた)が人々に愛され、古くから盆栽としても親しまれてきました。
待ちこがれた春の香りを、少しでも早く楽しみたい…という思いからでしょうか、この時期、梅の盆栽「盆梅(ぼんばい)」を愛でる会が日本各地で開催されています。
BONSAIといえば今や世界の共通語ですが、「盆梅」という言葉にはなじみのない方も多いでしょう。盆梅とは、ひとことで言えば鉢植えの梅の木のこと。
江戸時代には、座敷に盆梅を並べて、その枝ぶりや花姿、香りまでをも楽しむ催しが盛んに行われていたそうです。
今に伝わる盆梅の中には、高さが3メール近いものや、樹齢が400年を越える古木もあります。天井まで届くような盆梅を初めて見た人は、これほど大きな木が鉢の中で生き続けていることに、きっと驚くでしょう。
それは、植え替えや剪定、水やりなど、一日として欠かすことのできない手入れのたまもの。そうして丹精した盆梅だけが、春、美しく香り高い花を咲かせることができるのです。
盆梅を鑑賞する機会があれば、花を咲かせた人々の深い愛情にも、思いをはせてみませんか。
*『香りの散歩道』は
朝野家提供で、毎週水曜日FM山陰(16:55~17:00)放送、日本海新聞・大阪日日新聞に掲載されます。(墨絵:朝野家社長 朝野泰昌)