秋の夜長に、繰り返しページを開いてみたくなる本。皆さんにもきっとあるでしょう。
さびしいくらい静かな夜、誰かとお茶が飲みたくなったイルカと、誰かとビールが飲みたくなったクジラが出会い、友達になった……。そんなほのぼのと夢のある物語を書いたのは、詩人の工藤直子(くどう・なおこ)さん。
今から25年前、1984年に発表された『ともだちは海のにおい』という本です。詩のような、童話のようなこの物語は、小学生から大人まで愉しめるロングセラーになりました。そして、主人公のイルカとクジラがたくさんの人に愛されるようになって4年後、『ともだちは緑のにおい』という2冊目の本が生まれたのです。
海のにおいがする友達はイルカとクジラでしたが、緑のにおいがする友達は……ライオンと、ロバと、かたつむり。ちょっと意外な組み合わせですが、太陽が緑色の地球に向かって「いっしょに あそぶもの このゆび とまれ」と合図をしたら、ライオンとロバとかたつむりが友達になったのです。
かたつむりをおでこに乗せて、草原を歩くライオン。ロバはライオンに編んでもらった、よそいき用の三つ編みが大のお気に入りです。この不思議であたたかな物語の世界に入り込むには、実際にページを開いてもらうしかありませんね。
絵本作家の長新太(ちょう・しんた)さんが描いた挿絵も楽しい、『ともだちは海のにおい』と『ともだちは緑のにおい』。秋の夜長におすすめの2冊です。
*『香りの散歩道』は
朝野家提供で、毎週水曜日FM山陰(16:55~17:00)放送、日本海新聞・大阪日日新聞に掲載されます。(墨絵:朝野家社長 朝野泰昌)