なにかと慌ただしい年の暮れ。その日の疲れを取るためには、ぐっすり眠るのがいちばんですね。
そうは言っても、なかなか寝つけないという方は、おだやかな香りで安眠を誘う、香りじかけの枕を使ってみてはいかがでしょう。
ラベンダーやローズなど、心を落ち着けてくれるハーブを詰めたポプリピローは、ヨーロッパではおなじみの安眠グッズ。香りには好みがありますから、自分が心安らかになれる香りを選んで、枕カバーの下にしのばせてみませんか。いくつか試してみて、どの香りがいちばん効果があるか比べてみるのもいいですね。
枕に香りをしかけるというアイデアは、日本にも古くからありました。
江戸時代に流行した香枕(こうまくら)は、箱形をした枕の中に香炉を入れ、箱の上の透かし彫りからたちのぼるお香の香りを楽しんだもの。安らかな眠りを誘うだけでなく、髪に香りを移す道具としても使われていました。
平安時代の貴族は身だしなみとして、着物に香をたきしめる伏籠(ふせご)という道具を愛用していましたが、日本人は昔から、髪にも香りのおしゃれをしていたのですね。
また、香枕は別名、伽羅枕(きゃらまくら)とも呼ばれたそうですが、これは最高級のお香の名前であり、江戸のまちでは当時「素晴らしい」という意味のほめ言葉でもあった、伽羅の名をとったものです。
うっとりするほど素晴らしい香りの枕。皆さんも現代のスタイルで、香りじかけの枕を楽しんでみませんか。
*『香りの散歩道』は
朝野家提供で、毎週水曜日FM山陰(16:55~17:00)放送、日本海新聞・大阪日日新聞に掲載されます。(墨絵:朝野家社長 朝野泰昌)