「夏野菜」と聞いて、皆さんはどんな野菜を思い浮かべますか?
ナスやキュウリ、オクラ、ピーマン、ゴーヤ……そして、真っ赤なトマト。数ある野菜の中でも、トマトは世界中で愛されている人気者です。
そのトマトが、南米大陸からヨーロッパにもたらされたのは、大航海時代の16世紀頃。けれど、当時は食用の野菜ではなく、鑑賞用の珍しい植物として扱われていました。しかも、独特の香りがする鮮やかな色の実をつけることから、毒のある植物だと思われていたそうです。健康野菜の代名詞のような、今のトマトからは想像もできませんね。
そうした誤解が解けて、ヨーロッパでいち早くトマトを食べはじめた国は、スペインとイタリアでした。
イタリアで最も古いトマト料理のレシピは、1692年にナポリの料理人が書いたものだといわれています。トマトをソースとして使った煮込み料理で、その後100年足らずの間に、イタリアでは多彩なトマト料理が生まれることになるのです。
18世紀、世界でも有数のトマトの産地となった南イタリアは、パスタの原料であるデュラム小麦の一大産地でもありました。そこでトマトとパスタが幸福な出会いを果たしてくれたおかげで、今、私たちはおいしいパスタ料理を食べることができるのですね。
毒草扱いされた時代を乗り越え、世界中で愛される健康野菜になったトマト。この夏も、たくさん食べて元気をもらいませんか。
*『香りの散歩道』は
朝野家提供で、毎週水曜日FM山陰(16:55~17:00)放送、日本海新聞・大阪日日新聞に掲載されます。(墨絵:朝野家社長 朝野泰昌)