(墨絵:朝野家社長 朝野泰昌)
鏡開きや小正月など、一月は縁起の良い「ぜんざい」をいただく機会が増えますね。
小豆の赤い色には厄除けのチカラがあると言われ、寒い季節にほっこり甘い香りのぜんざいは、こころまで温めてくれる気がします。
関東ではお汁粉と呼ばれることが多いようですが、作家の芥川龍之介(あくたがわ・りゅうのすけ)も、お汁粉が好物だったそうです。「羅生門(らしょうもん)」などの作品や、鋭い目つきをした写真からは、お汁粉好きという素顔は想像しにくいですね。
けれど、意外なことに芥川龍之介はお酒を飲めない下戸(げこ)で、「しるこ」という題名で随筆を書くほどの大の甘党でした。
その随筆では、関東大震災以降、東京にお汁粉屋さんが減ってしまい、どこもカフェだらけになったことを嘆いています。
そして「これは僕等下戸仲間の為には少なからぬ損失である。のみならず僕等の東京の為にもやはり少なからぬ損失である」と筆にチカラをこめました。
また、西洋人がこの味を一度知ったら、天ぷらのようにお汁粉を愛し、ニューヨークのクラブやパリのカフェで、お汁粉をすすりながら語らうかもしれない・・・と、その光景をユーモアたっぷりに想像しています。
それから80年以上経った今、日本のお汁粉はパリでも食べることができます。天ぷらほど有名ではありませんが、芥川龍之介が想像した未来は、いつか現実になるかもしれませんね。
*『朝野家・香りの散歩道』は朝野家提供で、毎週水曜日FM山陰(16:55~17:00)放送、日本海新聞・大阪日日新聞に掲載されます。
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