(墨絵:朝野家社長 朝野泰昌)
明日は十五夜。中秋の名月です。
名月をとってくれろと泣く子かな
小林一茶が、無邪気な子どもの願いを詠んだ句です。秋の澄んだ夜空にくっきりと浮かんだ月は、手をのばせば届きそうに見えたのでしょうね。けれど、いくらせがまれても、月は仰ぎ見るもの。
十五夜には、月の満ち欠けによってもたらされる秋の収穫に感謝して、お供物をするのが昔ながらの習わしです。満月に似せて作られたという、まあるいカタチの月見団子と一緒に供えるのは、ススキと秋の草花。
「萩の花 尾花 葛花 なでしこの花 女郎花 また藤袴 朝顔の花」と、万葉歌人が歌に詠み込んだ、「秋の七草」の中から取り合わせて生けてみてはいかがでしょう。
ちなみに、尾花というのはススキの別名です。ススキの穂は風に吹かれると、動物の尾のように見えることから、この名が付いたとか。そういえば、長くてふさふさした馬のしっぽに似ていますね。
また、ススキの葉っぱは細長くて鋭いカタチをしていることから、魔除けの力があるともいわれています。そのため、月に供えたススキを軒先に吊るしておくと、災いを退けてくれるという言い伝えも。
明日の十五夜には、ススキと秋の草花の香りに誘われて、美しい月が顔を出してくれるといいですね。
*『朝野家・香りの散歩道』は朝野家提供で、毎週水曜日FM山陰(16:55~17:00)放送、日本海新聞・大阪日日新聞に掲載されます。
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