
( 墨絵:朝野家社長 朝野 泰昌 )
6月の花嫁、ジューンブライドになられた皆さま、おめでとうございます。結婚式のスピーチで贈られた「はなむけ」の言葉に、感動された方も多いことでしょう。
この「はなむけ」という言葉を耳にしたとき、美しく咲く「花」という字を思い浮かべた方はいらっしゃいませんか。人生の門出を祝う場面で使われることが多いので、花束を贈るようなイメージがあるのかもしれませんね。
実は、「はなむけ」の「はな」は、花束の「花」ではなく、匂いをクンクンと嗅ぐほうの「鼻」です。しかも、馬の鼻。その昔、馬に乗って旅立つ人の無事を祈って、見送る人が馬の鼻を行く先に向けてあげる習慣がありました。この「馬の鼻を向ける」という言葉が短くなって、「はなむけ」になったのです。
平安時代に書かれた『土佐日記』にも、「航路(ふなじ)なれど、馬のはなむけす」という一文が出てきます。旅立つ人は船で行くのだが、馬のはなむけをする。という意味で、この場合の「はなむけ」は、送別会のような宴(うたげ)のことだとか。
そして、今。「はなむけ」という言葉は、結婚式だけでなく、送別会や卒業式など、新たな一歩を踏み出す人を見送るときに使われますね。
入学式や歓迎会など、人を迎えるときに使うこともあるようですが、本来の意味とは違うことを覚えておいてください。馬の鼻を向けることから生まれた「はなむけ」。その行く先には、いいことがいっぱい待っているといいですね。
*『朝野家・香りの散歩道』は朝野家提供で、毎週水曜日FM山陰(16:55~17:00)放送、日本海新聞・大阪日日新聞に掲載されます。
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